注文住宅を建てるときにどういったことに注意したほうが良いでしょうか?

俗に「家は3回建てないと成功しない」と言われます。それはそうなのでしょうけれども、実際に人生で3回も家を建てることのある人は極めて稀でしょう。すでに注文住宅を建てたことのある人の経験に学ぶしかありません。そこでこの記事では、注文住宅を建てる際の注意点について説明します。

事前準備をする

注文住宅は間取りやデザインな設備を自由に設計することができますが、それは逆に言えばいつまでも決まらないということでもあります。また一人暮らしの方が独居用の家を注文住宅で建てるということも稀だと思います。通常は注文住宅で家を建てるのは家族、とくに施主のご夫婦の共同作業ということになりますが、どちらか一方の意見だけを聞いてももう一方は不満を抱えるになりますし、どちらか一方だけが熱心でもう一方は無関心というのも、あまり良い結果になるとは思えません。ですので、この事前準備は一人だけでやるのではなくて、ご家族一緒に、どのような生活がしたいのか、どのような家に住みたいのか、どのようなこだわりを大切にしたいのか、そういったことを共有しておきましょう。
特にこの段階では、素材の共有が大切です。素材というのは写真と失敗事例のことです。
頭の中に自分が住んでみたい家のイメージがあったとしても、建築のプロでない限りはそれを言葉で的確に表現することは難しいです。そのため、せっかく頭の中に明確なビジョンがあってもそれが伝わらずに設計や施工が進んでしまったのでは悲しいです。ウェブページでも雑誌でも良いので、「これは良い」「こういう家に住んでみたい」という写真があれば保存しておきましょう。
また、失敗事例に関してはネットで検索するとたくさん出てきますし書籍もあります。失敗というのは極めて具体的な事例集と言えるので、「これはだめだよね」「これぐらいは我慢できるのじゃないかな」と言ったことをご家族(ご夫婦)で共有するようにしておきましょう。

お金(予算組み)についてしっかり考えておく

注文住宅は夢から始まるものですので、いろいろ調べたりしていく中で、どうしても予算が膨らんできます。最初はAという設備で十分だと思っていたけど、Aよりも高級なBを見てしまうと、もうAがみすぼらしいものにしか見えなくなった、家の設備はスマホを新機種に買い換えるようなわけにはいかない・・・新築のときに決めてしまうしかない・・・そうやって予算は膨らんでいきます。日常感覚から外れた大きな金額を見ているうちに、ここでちょっと予算が膨らんだって大丈夫なような気がしてきます。そしてそれが積み重なっていきます。
しかし、予算の上限についてはしっかりと把握しておいてください。住宅ローンの組み方や年収と借入れ可能額などについてはここでは述べませんが、ローンであれ預貯金であれ、現実的に可能な金額の上限というのは必ずあります。そこから背伸びをして月々の返済額を大きくしても、生活が貧しくなるばかりです。
とはいえ、ただひたすら節約とコスト削減につとめるのでは何のために注文住宅を選んだのか分かりません。
そのため、何にこだわり何にこだわらないかの優先順位をつけることが大切になります。これは事前に準備をしてイメージを合わせておかないと、ご家族(ご夫婦)でどちらの意見(こだわり)を重視するのかという予算の取り合いになってしまいます。
お金はいくらあっても十分ということはありません。ですから必ずこの優先順位の問題になります。事前にイメージを合わせておかないと家族の中で価値観を否定しあいリソースを奪いあうというつらいことになってしまいます。

打ち合わせには時間と手間をかける

注文住宅の建築会社との打ち合わせは長丁場になります。時間的に長いだけではなくて内容もハードです。
建築会社に間取り(プラン)と概算見積もりを作ってもらう前半部分と、契約を挟んで後半の設計打ち合わせに分かれます。
この時期にやることは間取りなどの部分だけではありません。土地を購入する場合は土地選びやその土地に関する様々な手続きがありますし、銀行との住宅ローンの借り入れに関することもあります。一つだけをとってもかなり重たいことが同時並行で動くので大変だと思いますが、全体像を把握してパニックに陥らないように気をつけておいてください。
しかしそれでも、土地や住宅ローンは打ち合わせといっても基本的には決まりごとの話ですし、書類にヌケモレがないかとかそういうことです。また最終的には不動産屋や役所や銀行といったプロが構えています。しかし間取りや設計に関する打ち合わせは、最終的には施主であるあなた自身が決めなければいけないというつらさがあります。これこそが内容がハードだという意味です。
しかしそれでも、乗り越えなければどうにもなりません。
打ち合わせは議事録を取りましょう。そしてその議事録を読み返し、不明点や懸念点を洗い出しておいてください。そしてその不明点や懸念点は必ず建築会社に説明してもらいましょう。説明してもらってもまだ分からない場合は、分かるまで質問しましょう。
住宅の建築は専門的な業務です。多くの場合、施主である私達は、専門用語も建築学の知識も法律上の制限も知りません。専門用語を誰にでも分かる言葉で伝えられるのがプロだというようにもいいますが、それはあくまでスローガンであって、実際には専門用語でなければ伝えられない概念や、基礎知識がなければ理解できない論理というものは存在します。しかしそれでも、分からないところを放置せずに食い下がり、またプロである建築会社側も分かるまで説明をする。そういったやり取りの中で、本当のこだわりであったり、理解であったり、伝えきれていない不安や懸念が浮き彫りになったりするものです。それが分かったら、それを解決するのがプロの仕事であり、施主であるあなたは分からないことを放置しないことによって、プロの本当の力を引き出すのだといえます。住宅は「信用しているから任せた」で丸投げしてしまうにはあまりにも高い買い物です。長丁場でしんどいところですが、頑張っていきましょう。

工事現場に足を運ぶ

建築工事中は定期的に工事現場に足を運びましょう。また第三者機関の検査日程や結果を確認するようにしましょう。これは建築現場に緊張感を持ってもらうためです。 施主が定期的に来る現場は職人に緊張感があります。手抜き工事に対策となります。
また工事現場に行ったら写真を撮っておきましょう。現場は嫌がるかもしれませんが、将来のためになります。トラブル発生とかその証拠という意味もありますが、家が建った後も「もしかして」「ひょっとすると」と何かと心配なものです。目に見える部分はともかく、基礎の配管など目に見えない部分はこの不安が大きくなります。そのとき、「ネットで聞いたのだけどもしかして・・・」のような説明をされても、建築会社も困ってしまいます。事実をもとにした説明を受けるだけでも安心感が異なってきます。

信用できる建築会社を選ぶ

おそらくこれがいちばん大切なことになるのではないかと思います。
注文住宅というのはそもそも施主の希望通りの住宅を建てられるという仕組みなのですが、その施主は多くの場合素人であり、家を建てる経験は今まで皆無だったというのが普通です。そして、いくら施主の思い通りになるといっても、建築は経験と知識の集積したものでもあります。つまり、プロの意見は大切にしなければいけないのです。
施主と建築会社のこの関係は本質的に不安定で不均衡なだけに、より一層信用というものが必要になってきます。この不安定・不均衡をカバーするのはお互いの信用しかないからです。
設計でも契約でも、しっかりと質問をして相手がちゃんと説明をしてくれるかどうかを確かめましょう。はぐらかしたり説得したりしてくるところは信用できません。また、その時の態度に誠実さや優しさがあるかどうかも見極めましょう。不誠実な会社や優しくない人は、お互いの立場や知識に差があるとき、相手の無知や弱みにつけこもうとします。癖になっていますので反射的に踏み込んでくるのです。こういったところは回避して、よい工務店を選ぶようにしましょう。